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 接道義務とは?不動産購入で知っておきたい接道義務のイロハと法改正による影響



記事公開日

最終更新日 2024年10月10日

不動産の購入を考える際、“接道義務”という言葉を聞いたことはありませんか?
物件が接道義務を満たしているか否かは、資産価値に大きく関わる重要なポイントです。不動産の売買を考えるのであれば、ぜひ知っておきましょう。

 
また、2025年4月に予定される建築基準法改正により、接道義務を満たさない再建築不可物件では大規模リフォームが難しくなることが想定されます。今後、接道義務を満たしているか否かという点が、いっそう資産価値に大きく影響するようになるかもしれません。
  

この記事では、接道義務の基本を解説したうえで、接道義務を満たす方法や2025年4月の法改正によって考えられる影響などを網羅的にご紹介していきます。

 

■接道義務とは?

接道義務とは、建築物の敷地が道路に接していなければならないとする規定を指します。建築基準法の第43条で接道義務が定められており、接道義務違反の土地で建物の工事を行なおうとしても、行政からは許可が下りません。

 

◇そもそも接道とは?

建築基準法における接道とは、土地が接している道路を指す言葉です。都市計画法に基づいた都市計画区域・準都市計画区域内では、建築物の敷地は、原則として幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接している必要があります。
なお、道路の定義は、建築基準法の第42条によって細かく規定されています。

 

◇接道義務が定められている理由

建築基準法や都市計画法は、無秩序な建築を防止し、安全で暮らしやすい街づくりを実現するために定められています。接道義務のおもな目的は、緊急車両の活動経路と災害時の避難経路を確保することです。救急車や消防車が事故・事件の現場に速やかに到達でき、災害時には人や車が安全に避難できるように、都市計画区域・準都市計画区域内では接道義務を満たすことが求められます。

 

◇接道義務をクリアしないと建築ができない

土地に新たな建物を建てたり大規模な増改築を行なったりする際は、一部を除き接道義務をクリアしなければ建築ができません。道路に接している部分が1ヵ所でも2メートルに満たない場合や、接している道路が“建築基準法上の道路”に該当しない場合は、接道義務違反となります。

 

■接道義務には例外がある

接道義務を満たす建築基準法上の道路は、原則幅員4メートル以上でなければならないと規定されています。ただし、この決まりには例外があり、要件を満たしていない道でも法律上では道路として扱われ、接している敷地に建築できるケースがあるのです。

 

◇例外①.2項道路

建築基準法の第42条2項では、幅員4メートル未満の道でも例外的に道路とみなすと規定されています。“2項道路”“みなし道路”と呼ばれ、以下の要件に該当する道を指します。

 

【2項道路の要件】
 幅員4メートル未満
 1950年(昭和25年)の建築基準法の施行、または都市計画区域・準都市計画区域への編入の時点で建物が建ち並び、道として存在していた
 特定行政庁の指定を受けた

 

2項道路に接している土地は、道路の中心線から2メートルまでの敷地を道路として提供することで、接道義務を満たすことが可能です。道路にするために敷地を後退させることをセットバックといい、しばしば接道義務を満たす手段として利用されます。詳細はのちほど解説します。

  

◇例外②.3項道路

土地に特殊な事情があり、2項道路のなかでも将来的に幅員4メートル以上への拡張が難しいものを、特例として道路と認める規定があります。建築基準法の第42条3項に規定されていることから、“3項道路”と呼ばれます。
 
【3項道路の要件】
 幅員4メートル未満
 1950年(昭和25年)の建築基準法の施行、または都市計画区域・準都市計画区域への編入の時点で建物が建ち並び、道として存在していた
 特定行政庁の指定を受けた
 道路の中心線から1.35メートル以上2メートル未満の距離を確保できる(※)
※片側が崖や河川などの場合は、その境界線から2.7メートル以上4メートル未満

 

◇例外③.第43条但し書き道路(空地)

上記のほか、建築基準法の第43条但し書きの規定により、特例として道路と認められるケースもあります。敷地の周囲に広い空地などがあって、交通や防火、衛生などの観点から特定行政庁が問題ないと認定し、建築審査会の同意を得て許可した場合は、幅が規定に満たない道でも道路として扱われます。
 

2025年4月法改正による接道義務違反の土地への影響

 
2025年4月に予定される建築基準法改正により、再建築不可物件の大規模リフォームが従来に比べて難しくなることが想定されます。法改正における変更のポイントと、接道義務違反の物件に生じる影響について見ていきましょう。
  

建築基準法改正で4号特例が大幅に縮小される

 
2025年4月の建築基準法改正で大きなポイントとなるのが、いわゆる“4号特例”の縮小です。
 
“4号特例”とは、現行法第6条の第1項第4号で規定される建築物(4号建築物)における大規模修繕や模様替えについて、建築確認申請が不要となる特例(審査省略制度)を指します。現行の4号建築物に含まれるのは次のような建物です。
  
<現行の4号建築物>
 
・木造2階建て以下で、延べ床面積500平方メートル以下の建物。ただし高さ13メートル・軒高9メートルを超える場合は該当しない
・木造以外の場合、平屋であって延べ床面積200平方メートル以下の建物
 
本来、壁や柱、床、梁、屋根、階段などの主要構造部の1種類以上について過半を変更する“大規模修繕と大規模な模様替え”は、建築確認申請の対象とされています。ただし、4号特例が適用されるため、4号建築物であれば申請をしなくても大規模修繕や模様替えが可能です。
 
これにより、再建築不可物件でも4号建築物に該当すれば、大規模なリフォームができるようになっています。
 
しかし、2025年4月に予定される法改正後は、従来の4号建築物が“新2号建築物” “新3号建築物”に変更される予定です。具体的には次のように定義が見直されます。
  
<法改正後>
 
・新2号建築物:木造2階建て、および延べ床面積200平方メートルを超える木造平屋建て
・新3号建築物:延べ床面積200平方メートル以下の木造平屋建て
 
改正後の審査省略制度の対象は新3号建築物のみであり、新2号建築物では大規模修繕や模様替えの際の建築確認申請が必要です。つまり、大規模リフォームにおいて建築確認申請が必要な建物の範囲が広がることになります。
 
木造2階建てや一定規模以下のを超える木造平屋建ての再建築不可物件でも建築確認申請が求められるようになるため、大規模リフォームを行なうのが難しくなることが想定されます。
 
2025年4月予定の法改正については、こちらの記事で詳しく解説しています。
 
再建築不可にも影響する2025年建築基準法改正!おもな変更点と今後を解説
  

接道義務違反の物件のリフォームがしづらくなる

 
上記のとおり、法改正後は、接道義務違反で再建築不可となっている物件を大規模リフォームすることが難しくなります。再建築不可の土地で新たに建物を建てたり、物件を大きくリフォームしたりする場合には、再建築不可になっている要因を排除し、再建築が可能な状態にする必要があるでしょう。
 
接道義務違反で再建築不可となっているケースで再建築を可能にするには、あらためて接道義務を満たせる方法を取らなければなりません。このとき、接道義務違反になっている要因が“接している道路の幅が狭いこと”にあるのか、“接道部分が不足していること”にあるのかによって有効な方法が異なります。
 
接道義務をクリアするための条件については、次の章で詳しく見ていきましょう。

  

■接道義務をクリアするには?

接道義務を満たしていない敷地で建物を建てたい場合、例外に該当していても自由に建築することはできません。接道義務をクリアするには、代表的な方法を知っておく必要があります。

 

◇セットバックをする

セットバックとは、道の中心線から2メートルまでの敷地を道路として提供するために、敷地を後退させることです。敷地と接している道が建築基準法の施行以前より存在するのであれば、セットバックすることで建築の許可が下りる可能性があります。

 

セットバックするうえで注意すべきなのは、“道路として提供した部分は敷地面積から除外される”という点です。のちほど解説する“建ぺい率”や“容積率”にもかかわるため覚えておきましょう。

 

◇隣地を買い取る

道路に接している敷地が2メートルに満たないケースでは、隣地の一部またはすべてを買い取り、自分の土地の一部とすることで接道義務をクリアできます。土地を購入できるだけの資金があり、隣地所有者との関係が良好な場合に有効な方法です。

 

ただし、隣地の買い取り交渉は難航が予想されます。両者ともに土地の売買の知識がなければ、適正価格がわからずトラブルになることも考えられるでしょう。購入ではなく賃貸借も視野に入れて検討することをおすすめします。

 

◇行政窓口に相談する

そもそも、自分の敷地と接している道路がどのタイプの道路なのか、どうすれば接道義務を満たせるのかがわからない、という方も多いでしょう。道路の区別や接道義務の要件は非常に複雑なため、専門家でなければ判定が難しいのが現状です。

 

まずは、具体的な要件や解決方法を、市町村の担当部署に問い合わせてみましょう。窓口は自治体によって異なりますが、おおむね建築関連の担当課で相談にのってもらえます。事前に電話で連絡してから相談に行くとスムーズです。

 

■接道義務をクリアして住宅を建てる際の注意点

接道義務をクリアした土地には、住宅を建築する際に通常の土地にはない注意点があります。

 

・建ぺい率と容積率に注意
敷地をセットバックした場合、セットバックする前より敷地面積が減少します。そのため、セットバック前の面積を基準に建築の計画を立てると、建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)や容積率(敷地面積に対する延べ床面積の割合)がオーバーする可能性があります。施工会社や住宅メーカーに相談する際は、敷地をセットバックする旨を共有しておきましょう。

 

・エリアごとの規制を確認する
建築物にはエリアごとに規制が設けられている場合があります。用途地域によって、建物の高さや建ぺい率、容積率の基準が異なるため、敷地面積が変化する場合はこの点も併せて確認しておきましょう。

 

・わからない場合は専門業者に相談する
不動産知識が少なく、建築に不安がある場合は、専門業者に相談するとよいでしょう。特に、接道義務を満たしていないなど“訳あり”の土地の専門業者は、関連法規や建築の際の問題点などにも明るいためおすすめです。

 

■まとめ

都市計画区域・準都市計画区域内の土地には“幅員4メートル以上の道路に、敷地が2メートル以上接していなければならない”という接道義務が設定されていますが、接道義務を満たしていない土地も多いのが現状です。

 
これまでは接道義務を満たさない再建築不可の物件であっても、一定の要件を満たせば、4号特例により大規模リフォームの実施が可能でした。しかし、2025年4月の法改正以降は建築確認申請が必要な建物の範囲が拡大され、接道義務違反の物件の多くで大規模リフォームが難しくなることが予想されます。
 
法改正後も大規模リフォームや建て替えができるようにするには、接道義務をクリアして再建築を可能にすることが必要です。セットバックや隣地の買い取りなどの方法を取れば、接道義務をクリアできる可能性はあるでしょう。ただし、適切に対処するには、敷地に接している道路の種類や要件の確認など、複雑な専門知識が必要です。

 

接道義務をクリアして建築可能にするためには、一度“訳あり”物件の専門業者に相談するのがおすすめです。当社は接道義務違反などが原因で再建築できない土地を多く取り扱っており、年間100件以上の取引を通じた多くのノウハウを有しています。

 

「不動産売買を検討しているので見積もりだけお願いしたい」などのご利用も大歓迎です。接道義務違反の土地でお困りであれば、ぜひお気軽にご相談ください。

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【著者】 岡村 岳 (第一土地建物 株式会社 代表取締役)

当サイトを運営する第一土地建物株式会社の代表取締役。1982年生まれ。

専修大学法学部卒、株式会社エイビスにてマンション販売事業・戸建仲介事業に従事し、長田商事株式会社を経て2016年に第一土地建物株式会社へ専務取締役として参画。2017年に代表取締役に就任。

関東近郊を中心として、さまざまな条件のついた流通の難しい不動産の扱いに専門知識を持ち、年間100件以上の再建築不可物件に携わる。



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